本当に狂暴?-アライグマ性格編

テレビなどで紹介されると単純に狂暴などと言われてしますアライグマですが、実はそうとも言えないところもあります。人間からの視点で性格を考えてみます。
記事作成日: 2017.09.20/記事更新日: 2019.12.22

成長すると豹変する?

アライグマを大人になってから捕まえて飼うといのは難しいですが、子供の頃から飼うのであれば性格を除くと非常にペットに向いた生き物だと思います。どんなに大きくなっても10kg超える程度で大半はそれより小さく、体臭も臭くないほうです。雑食で頑丈な上に、トイレだって決まった場所を覚えることができます。それだけ良い要素を持っていても、性格で嫌煙されるのです。

飼育下では狂暴にも良き友になる

結論から言えば、一握りのアライグマはとても飼いやすいという具合だと思います。アライグマに限らず家畜化されていないような動物は、基本的に飼いにくいものです。家畜化されてる犬猫とは違うので、個体差も激しく中には懐きやすい個体もいるという具合です。接し方も影響するので、その点も重要になります。

アライグマは子供の頃は非常に人に懐きやすいと言われています。これはアライグマが生後半年ほどまで、親と行動を共にするせいだと思われます。野生下では一か月半を過ぎると巣を出て、親の後ろをついて回ります。生後半年の親離れの時期に近づくにつれて、性格が変わっていきます。

大人になると一般的に狂暴になる言われていますが、それはちょっと違います。人間と同じようにアライグマにも個性があり、その個体によって大人になってどういう性格になりやすいかは違います。生まれもった性質として、臆病・好奇心旺盛・攻撃的だったり個性があります。

それに加え、人間がどう接していくかでも大きく変わります。それなりに大きくなる動物なので、ある程度広いケージが必要です。十分なスペースがなければ、ストレスも溜まるでしょう。長い間人間と共に歩んできた犬猫と同じようには扱えません。家畜化されてない生き物という前提で粘り強く接しないと、難しいことも沢山あります。この辺りをちゃんと考慮して接することが出来るかでも、性格は変わってくるはずです。

動物園飼育員の方にも性格について伺いましたが、繁殖期はかなり気性が荒くなるという話もありますが、動物園の方に伺ったところそこまで影響するわけでないようです。性格も個体差があり、臆病な個体や粗暴な個体があり性格は様々なようです。

先天的要素に人間の接し方という後天的要素の組み合わせで、乱暴で手に負えない個体も居れば、人と仲良く暮らせる個体が出てくるのです。

手に負えなくなると何が問題か?

手に負えなくなると問題になるのは、力の強さです。アライグマの体重は5kg~15kgと非常に広く、オスのほうが大きくなる傾向にあります。

体重が5kg程度の個体であれば小型犬とそんなに変わらず、噛む力も軍手があれば何とかなります。それでも十分大変ですが、まだ飼っていけるレベルです。一方で10kgを超えるような個体だと、それは見るからに別物の生き物となります。大きな個体が暴れれば、大けがをしたり本当に手に負えないのは明らかです。

今ですら決して動物に対する意識が高いとは言えませんが、1980年代など今よりもっと低かったのは言うまでもありません。よく調べず飼い始めて逃がしたり、ペットショップも簡単に飼えると偽っていたところもあったそうです。そうして何も知らずに飼って、飼いきれなくなった個体が逃がされていきました。アライグマ自体の性質もありますが、一番は人間の知識不足です。

そもそも、犬猫が他の動物に比べとても飼い易いだけなのに、一番身近な動物なのでそれが基準になってしまいます。エキゾチックアニマルと呼ばれるような変わった動物の中では、しっかり調べて飼う分には飼うことも可能なほうだと思います。実際動物園の飼育員の方に伺ってみても、単純に狂暴という話はあまり聞きません。最近はそれらをしっかり調べて、いろいろな動物を飼育する方も増えています。もっと時代が違っていれば、アライグマもただの変わったペットで終わっていたかもしれません。

アライグマ同士は仲良し?

アライグマ自体は基本的に単独生活を営む動物ですが、生息数が多い地域や動物園では複数の個体が一緒にいる姿を見ることが出来ます。そこで茨城県のかみね動物園へ観察しに行きましたが、それを見る限りでは仲良しとも不仲とも言えないようです。

身を寄せて寝るアライグマ
身を寄せて寝ている
寒いときは身を寄せ合って暖をとったり、比較的中よくしているところも見ることが出来ました。

威嚇し合うアライグマ
威嚇しあっている
逆に同じ相手ずっと喧嘩をしている個体も見ることが出来ました。タヌキなんかは喧嘩するところをあまり見ないので、やはり少し気性が荒い面があるとも言えるかもしれません。

2頭で歩くアライグマ
2頭で歩くアライグマ
7月に撮影
ただ、基本的にはそこはかとなく上手くやっているので、集団生活が出来ないわけではありません。そこのあたりは微妙な距離をお互いとつつ、柔軟にやるようです。トレイルカメラでの観察でも、繁殖期でないのに2頭で歩いているところ観察していますし、アメリカでは集団でいる場合もあるようです。

シカは生息密度によって行動パターンが変わったりするので、アライグマにもそういった習性があるのかもしれません。

ちなみにかみね動物園は非常に多くの個体を一つの檻で飼育しているので、アライグマ同士のコミュニケーション観察がしやすい動物園です。興味がある方にはお勧めです。

野生では人間にとっては狂暴ではないが…

日本で野生のアライグマに襲われたというニュースもありますが、それはレアなケースです。普通はまず逃げます。私も野生のアライグマと何度か遭遇しましたが、向こうは猛ダッシュで逃げていきました。あなたがアライグマだったらと想像してほしいのですが、自分より何倍もある生き物に出会って、逃げられた逃げますよね? 他の野生動物同様にアライグマだって特別な理由がなければ、無駄に戦うより逃げるほうを選択します。


上の映像は実際にタヌキとアライグマ遭遇した様子を撮影したものですが、喧嘩などは特にしません。絶対にしないということはないでしょうが、好む動物ではないのだと思います。

しかし、危害を加えられると思ったら、反撃してくることもあります。捕獲をしている最中などでなければ、アライグマを見ても何もしないようにしましょう。

小動物にとっては脅威?

人間にとっては脅威ではなくとも、小さな動物たちには脅威です。アライグマは雑食でキツネや猫のような肉食性に近いものではなく、タヌキに近い植物などもよく食べるタイプですが、タヌキよりは少し肉食寄りです。小鳥やカエルなどが捕食するので、数を減らす原因になっていると考えられています。

単純な肉食性で言えば猫のほうが上で、そちらのほうが影響は大きいと推測できます。一方で水辺は得意なので、水辺の生物に対しては今までになかった新たな脅威のはずです。実際どの程度減らしているのかはデータが乏しく、研究が必要な部分でが、両生類に与える影響についてはある程度明らかになっています。穏やかな流れに住むサショウウオ類には影響が大きくなっているもの確かなようです。

日本の河川環境は護岸工事など人の影響で大きく変えられているので、その影響がまず甚大です。ここからは私の推測ですが、その改変された自然ではアライグマ有利に生息できることになり、数を大きく増やすことで追い打ちをかけているというのが実情だと思います。一匹あたりで問題を引き起こすというよりは沢山増えたから問題が起こっているのだと思います。この点も調査として不十分なようなので、今後の進展が期待されます。

※参考文献
岩下 明生(2016)「アライグマ(P r o c y o n l o t o r )防除事業 のための分布域と相対密度に関する研究 」・環境省「アライグマ排除の手引き」

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