マスクラットー日本の外来生物たち
関東の川でカピバラが居ると間違えられる原因になる生物、マスクラットを紹介します。
カピバラじゃないよマスクラットだよ
マスクラットはげっ歯目つまりネズミの仲間です。あまり馴染みのない名前だと思うのですが、関東でカピバラが居ると間違えられることのある生き物です。中部地方以西で間違えられるのは、ヌートリアです。
大きさは尻尾を含まない大きさが30cm程度で、尻尾が20cm程度です。なので尻尾を含まない大きさはモルモットと同じくらいです。
元々はアメリカやカナダと北米大陸に住んでいます。日本を含むロシアやヨーロッパ各国に毛皮用として飼育されてたものが外来種として定着しています。日本での生息地は埼玉・東京・千葉の県境付近の江戸川の水系が中心ですが、最近では埼玉県北東部の久喜市でも目撃されています。
雑食ではあるものの植物食を中心とし、その他に水棲動物も食べます。食べる植物は水辺に生えているものが中心で、ヨシの茎や地下茎など根も食べます。
巣は水辺に作ります。地面に穴を掘って巣とするため、堤防へダメージを与えることが心配されています。
年中繁殖可能ですが、3月と11月がピークです。年に5・6回子供産みます。
※参考文献
安野翔,角田裕志「埼玉県における特定外来生物マスクラットの生息状況」、国立環境研究所ホームページ 侵入生物データベース
・似てる外来種ヌートリア
・ドイツネズミはパイロットのお供?
・よくわからない影響
・イギリスでも一時増えたが…
・ヌートリアは増えたのにマスクラットはなぜ?
・駆除するなら今か
・ヌートリアは増えたのにマスクラットはなぜ?
・駆除するなら今か
似てる外来種ヌートリア
日本に住む外来種で似ているものとしてヌートリアが居ます。確かに遠目で見ると見分けるのが難しいと思いますが、ヌートリアは中部・関西・中国地方にしか住まないので、生息地ではっきり判別することが出来ます。
ドイツネズミはパイロットのお供?
毛皮用で日本に持ち込まれたマスクラットですが、それは太平洋戦争中のパイロットの
服の素材にするためのようです。そしてその時の名前はドイツネズミだったとか。
また、ヌートリアは国策により太平洋戦争前から戦後にかけて養殖が試みられました。戦前・戦中は軍用の毛皮、戦後は毛皮と食用としてです。こう見ると導入経緯も似た動物なのが分かります。
また、ヌートリアは国策により太平洋戦争前から戦後にかけて養殖が試みられました。戦前・戦中は軍用の毛皮、戦後は毛皮と食用としてです。こう見ると導入経緯も似た動物なのが分かります。
※参考
レファレンス共同データベースの質問より
よくわからない影響
現状日本での生息地は限られているため、生態系などへの被害を調べられていません。また、人への被害も以前は千葉でレンコン畑の被害が報告されていましたが、今ではレンコン畑のほうが消滅により被害が報告されなくなりました。そういったことから、あまり調査がされずに現代に至っています。
ドイツのチューリンゲンでは堤防を決壊させ、同じくドイツのサクソニーでは鉄道施設に被害を与えました。ただそれ以外は国内のネットで漁れる資料が少なかったので、Wikipediaのドイツ語版を翻訳をかけて軽く目を通してみました。そうすると堤防に穴をあけるなどして、今も結構手を焼いているようです。
イギリスでも一時増えたが…
マスクラットはイギリスでも1929年に毛皮用のものが逃げ出し、野生下で増えてしまいました。しかし、1932年年には国を挙げて根絶が開始され、実際に根絶することが出来ました。そのため外来種根絶の成功例として挙げられることが多いのです。ただ、マスクラットは水辺など限られた場所に住むので成功したとも言われています。
※参考文献
「愛知県におけるアライグマ野生化の過程と今後の対策のあり方について」 哺乳類科学 44 (2004)
ヌートリアは増えたのにマスクラットはなぜ?
ヌートリアは本州愛知県以西にすっかり定着した動物となっています。一方でマスクラットはそうでもありません。動物としての特性で言えばマスクラットも増えておかしくありません。まずヌートリアよりもマスクラットのほうが寒さに強く、ネズミの仲間だけあって多産です。生態を考えると増えても不思議ではありません。
それなのになぜ増えないかは不明です。マスクラットに限らず外来生物が定着する一般条件というのもはっきりはしていません。ただ、定着する条件として挙げられるのは、定着するチャンスがどれくらいあったかというものです。マスクラットは江戸川にあった養殖場から逃げ出したのが元で、それも戦後の一度です。一方でヌートリアは日本各地で繁殖が試みられた上に、戦前から1960年代手前まで養殖が行われていたようで、広がるチャンスも期間も長かったようです。そこの違いが大きいのかもしれません。もしからたら単純に増える過程で、何もしなければ今後増えるのかもしれません。この違いは興味深いものです。
駆除するなら今か
今のところは生息地の拡大も生息数の増加も限定的です。駆除をするなら当然数が少ないほうが楽なわけで、今がチャンスとも言えます。
ヌートリアは農業被害が多数出てるので色々調査が行われていますが、マスクラットは被害が少ないので行われていません。ちゃんとした生息数の調査を行い、もし増加が見込まれるなら早いほうが当然良いと思います。
また、数が増えてからでは予算がかかるだけでなく、駆除する数が増えマスクラットにも不幸です。日本で初めての外来種根絶例となったカナダガンは、数が79羽のうちに対策を打てたので27羽を動物園などに引き取ってもらうことも出来ました。もし本当に数が少ないのならば、そういう形で命を少しでも救うことも出来るかもしれません。
一方で今後も増加が見込めまれない可能性が高いのなら、そのままにして見守るのも選択肢として当然あります。駆除対象の動物だけでなく、対象動物以外も巻き込んでしまうからです。
一方で今後も増加が見込めまれない可能性が高いのなら、そのままにして見守るのも選択肢として当然あります。駆除対象の動物だけでなく、対象動物以外も巻き込んでしまうからです。
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