危険な病気を持ってる?ーアライグマ危険な感染症編
アライグマが媒介する可能性のある病気は様々ありますが、誤解されているケースがよく見られます。過剰に考えることも過小に考えることも、感染症対策としては不適切だと思います。この記事では環境省が発表している「アライグマ防除の手引き」に記載されている中で、アライグマが持っていて相対的に人が感染する可能性は少ないものの、万が一発症すると危険な感染症について紹介します。また、最近新たにアライグマとの関係が分かってきたSFTSについても紹介します。
とても重要な問題なため、出来るだけ誤りの無い用に記述したつもりです。しかし、もし間違いがあった場合は、ご指摘頂けると助かります。
記事作成日: 2018.02.14/記事更新日: 2021.05.21
レピストラ症・アライグマ糞線虫・その他ついては以下の記事を御覧ください。
どんな病気を持ってる?ーアライグマ身近な感染症編
とても重要な問題なため、出来るだけ誤りの無い用に記述したつもりです。しかし、もし間違いがあった場合は、ご指摘頂けると助かります。
記事作成日: 2018.02.14/記事更新日: 2021.05.21
狂犬病やアライグマ回虫症は持っていないが…
よく勘違いされる例として狂犬病とアライグマ回虫症の話です。どちらも治療が困難で死に至る可能性のある危険な病気です。日本のアライグマは今のところ、どちらについても保有している可能性は低いとされています。なので、過剰に反応する必要はありませんが、今後も絶対に大丈夫とは言えません。それがどういうことか、詳しく紹介します。
哺乳類なら殆どが感染する狂犬病
狂犬病はウィルスが原因の病気で、発病すると治療することはほぼ不可能で死に至ります。世界中で数万人以上の死亡者が毎年出る中、治療できたのは世界でも数例です。しかし、ワクチンを事前に接種することで予防できるほか、体内にウィルスが侵入しても即時発病しません。発病には通常1~3か月の潜伏期があり、長いと数年となります。その性質のため、感染の疑いがある時にすぐにワクチンを接種すればかなりの確率で助かります。
ウィルスがどうやって体内に侵入するかですが、狂犬病に感染した動物がほかの動物にかみつくなどして、体液に含まれるウィルスが傷口などから侵入します。そのウィルスが神経に侵入し、時間をかけて脳神経へ到達します。よくある例としては犬です。狂犬病に感染すると錯乱状態になるので、人に噛みついてきて感染します。
非常に危険な病気のため、世界中で根絶が目指されています。厚生省のホームページによると、2018年現在根絶が確認されているのは「日本・イギリス・オーストラリア・ニュージーランド・スカンジナビア半島の一部地域」とされています。
この時非常に重要な点として、狂犬病に感染するのは哺乳類全てと言っていいことです。確かに動物によっていろいろな理由から感染の確率は違い、感染源となる動物の99%が犬です。その他の1%に相当する感染源として、アライグマは注意すべき動物の一つとされています。キツネ・タヌキ・スカンク・コウモリなども危険度が高いとされています。しかし、これはあくまでも確率の問題で、感染地域であればどんな哺乳類に噛まれても危険性は0とは言えません。
逆に狂犬病が根絶されている地域では、他の動物同様にアライグマも安全となります。よって狂犬病が根絶されている日本については、今はあまり心配する必要はありません。
今はと書いたのは、今後も日本で狂犬病が根絶された状態が続くかは不明だからです。全ての輸入動物が狂犬病検査されているわけではなく、国内哺乳類のウィルス保有の調査が不十分との指摘があるからです。さらに、本来義務のはずの飼い犬への狂犬病接種をしていない飼い主が居たりするのも問題です。また、狂犬病が根絶されたと思われていた台湾では、根絶から約50年後の2013年にイタチアナグマでの感染があらたに見つかった例もありました。
なので、アライグマに限定せず、すべての哺乳類の病気として今後も注意していく必要があるのです。
余談ですが、先ほど説明したように海外のほとんどの地域では狂犬病が流行しています。海外旅行中に動物に噛まれたら、速やかに医者に動物に噛まれたことを伝えてください。また、事前にワクチンを打っておくほうが、後からワクチンを打つより安く経済的で安心出来ます。
※参考文献
小澤義博 「世界の野生動物狂犬病の現状と日本の対応策」
アライグマ回虫症 国内野生下では未確認だが要注意
アライグマ回虫症は寄生虫によるものです。この病気はアライグマを宿主として生活するアライグマ回虫が、アライグマ以外の体内に入ることで発病します。人間の場合は脳などの中枢神経に侵入し重大な障害を与へます。人間以外の動物が感染した場合でも同じような形で、大きなダメージを与えます。感染初期であれば駆虫薬が有効との実験動物での報告がありますが、何らかの症状が出てしまってからでは進行を止める治療し出来ません。感染経路としてはアライグマの糞に含まれる寄生虫の卵が、人を含む動物の口から入るからとされています。
ただしアライグマの原産地であるアメリカでも、1981年以降に確認された人での重症例は年間1例前後で、あれだけ沢山アライグマのいるアメリカですら発症例は多くありません。そして国内の野生のアライグマへの調査では、アライグマ自体がアライグマ回線虫を保有している例は確認されていません。そのため今のところ心配する必要性は小さいのです。
しかし、狂犬病同様に心配しなくて良いかというと、そうではありません。過去にペットととして飼育されていたアライグマでは感染例があることや、動物園でウサギが感染した例もあります。また、この寄生虫の卵に汚染された土壌や木などを綺麗にするのは難しく、汚染された物を煮沸・焼却するなどの徹底的な対策が求めら、万が一日本に定着した場合は非常に厄介です。
なので、狂犬病と同じように野生のアライグマでの感染が発生しているかの調査や、輸入動物へのチェックが重要となります。実際自治体などが定期的にアライグマがこの寄生虫を保有しているかの検査をしており、今のところは確認されていません。
※参考文献
佐藤 宏 (2005) 「人獣共通感染症としての回虫症─アライグマ回虫症を中心に─ (モダンメディア 51巻8号より)」・ 川中正憲、 杉山 広、 森嶋康之 (2002) 「感染症の話◆アライグマ回虫による幼虫移行症 (Infectious Diseases Weekly Report Japanより)」
新たに分かってきたSFTS
SFTSは日本語で重症熱性血小板減少症候群という病気で、英名の頭文字をとってSFTSという呼び方が一般的です。ダニがウィルスを媒介し、人間へ感染するのが一般的です。感染すると消化器系全般への影響で腹痛や嘔吐など消化器に関する様々な症状の他、赤血球や血小板などの減少などが起きます。高齢者を中心に死に至ることもある病気です。治療法は対処療法的なものしかありません。
このウィルスは中国で発見され、西日本を中心に日本でも存在することが分かりました。人の発症例は西日本で確認されています。ウィルスを保有する動物は西日本が多いのが分かってきます。しかし、鹿のSFTS抗体保有調査では東北の一部でも、ダニSFTSウィルス保有を調べると北海道でも確認されています。今までの人の感染例を考えると西日本は特に注意が必要ですが、それ以外の地域も注意が必要です。
ウィルスに保有しているダニに咬まれると、様々な哺乳類が感染します。そして感染したネコを診察した獣医と看護師が感染した例などから、感染動物の血液などからSFTSに感染する可能性も分かってきました。獣医らはマスクや手袋などある程度の対策はしていたので、場合によってはかなり簡単に感染する可能性があります。
今まで地域ごとの鹿のSFTS抗体保有率とダニのウィルス保有率の関係は指摘されており、関係性が高いと言われていました。しかし和歌山県の調査でアライグマ・タヌキ・アナグマなども比較的ウィルスの抗体保有率が高いのが分かってきたました。
アライグマ・タヌキ・アナグマは他の動物に比べると人里でも見ることが出来る動物です。それらがSFTSウィルスを持っている可能性もあるので、人里近くでもダニが居そうな場所で作業する場合は、長袖長ズボンなどで肌の露出を減らしダニにも効く虫よけを使う必要があります。それらの捕獲や傷ついた個体を見つけたときは、体液や排泄物も注意が必要となります。
※参考文献
広島県「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)診療の手引き」、東京都感染症情報センターHP 「重症熱性血小板減少症候群(SFTS」、東京獣医師会HP「重症熱性血小板減少症候群」
レピストラ症・アライグマ糞線虫・その他ついては以下の記事を御覧ください。
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