アライグマは卵大好き?―アライグマ観察編4

北海道のアオサギのコロニーを壊滅に追い込んだのは、アライグマではないかという話があります。そこでアライグマは実際どの程度卵が好きなのか、実験してみました。また、今回卵を置いたところにはタヌキも現れるので、その比較も行いました。

鶏卵をセッティングして実験

設置した鶏卵
設置した鶏卵
実験としては非常にシンプルです。スーパーで売っている鶏の卵をアライグマがよく出没するポイントに設置し、反応を見るというものです。

今回は定点観測ポイントとして、4月頃から観察を続けているポイントに卵を設置しました。このポイントではアライグマ・タヌキ・ハクビシン・アナグマなどが観察出来ているポイントで、2頭複数行動と1頭単独行動のアライグマが頻繁に確認できています。

やっぱり卵は大好き?

鶏の卵をまずは1日置いてみました。

卵にかじりつくアライグマ
卵にかじりつくアライグマ(左側)
設置した夜にはアライグマが現れ、卵にかじりつく様子が観察されました。同時に映像でも撮影していたのですが、卵の頭をかじって中の白身と黄身を食べるという形で食べていました。

うずらの卵も用意して更に検証

一先ずアライグマが卵に興味を示すというのは分かりましたが、タヌキとの絡みも調べるために更に実験をしてみました。

今までのこの地点の観察からアライグマは一度餌を見つけたところは、餌が無くなっても餌を確認するために長期的に現れる姿が確認されています。それに対しタヌキは、餌が見あたらなくなるとすぐに来なくなります。そして、また新たに餌を設置すると直ぐに現れるという傾向がみられました。

そこでアライグマもタヌキも好むドッグフードを3日間撒き、その後に3日間卵を設置するという方法をとりました。卵は鶏卵の他に、うずらの卵も追加で設置しました。

タヌキはドッグフードにすぐに反応

ドッグフードを食べるタヌキ
ドッグフードを食べるタヌキ
ドッグフードを3日間、カメラ付近に広く撒いて観察をしました。

タヌキの反応は非常に素早く、ドッグフードを撒いたその晩から一頭のタヌキが毎晩現れるようになりました。タヌキは最初の晩こそ0時を過ぎた深夜でしたが、次の日は日暮れ後すぐには来るようになりました。

逆にアライグマは最初の日と次の日は23時頃、3日目にしてやっと早くなって20時頃という具合でした。

やっぱり卵好きのアライグマ

ドッグフードから鶏卵2~3個とうずらの卵5個に切り替え、カメラの左がに鶏卵・右側にうずらの卵として、3日間設置しました。

手で卵を押さえてかじりつくアライグマ
手で卵を押さえてかじりつくアライグマ
アライグマのほうが反応は良く、卵を改めて設置した晩の23時頃に現れました。どちらの卵も食べていました。

卵を食べる二頭のアライグマ
卵を食べる二頭のアライグマ
卵へ切り替えた初日の最初に現れたのは、2頭で行動するアライグマでした。どうやらこの2頭が卵を食べつくしてしまったようで、この2頭が去ったあとは何の動物も来ませんでした。

卵を探すアライグマ
卵を探すアライグマ
卵を設置して2日目には単独行動のアライグマが20時ごろ現れました。

この日は風が強くカメラのセンサーが誤検知をしてしまい、21時以降の映像は撮影できなかったので、確認できたのは20時ごろ現れたアライグマだけでした。

卵に興味がないと思ったが…

卵にかじりつくタヌキ
卵にかじりつくタヌキ
タヌキは興味を示さないのかと思いましたが、最終日の3日目に19時ごろにタヌキが現れ卵を食べていました。この一頭が卵をほとんど食べてしまったようです。

この時アライグマと少し違ったのは、アライグマは卵のある場所で食べていたのに対し、タヌキは口で咥えて数メートルなど少し移動してから食べるという点です。

卵はタヌキもアライグマ食べる!
鳥にとってアライグマはやはり脅威か?

卵があればあるだけアライグマは食べるようなので、やはりアライグマは卵を好んで食べていると言ってよいと思います。タヌキについても同様の可能性が高そうです。高栄養な卵は、様々な動物にとって魅力的なんでしょう。

タヌキはドッグフードの反応などからも匂いに強く反応して餌の有無を認識しているのではと私は推測しています。今回3日のうち1日しか現れなかったのは、これが原因かもしれません。タヌキはイヌ科ですから、鼻が良く効きます。なので食用に洗浄された卵では匂いが小さく、あまり反応しなかったのかもしれません。鳥の匂いがすれば、また違う結果も考えられます。

鳥類への影響という点では、草に卵を作る小型の鳥類や地面に巣を作る鳥類に対しては、タヌキもアライグマも似たような脅威と推測します。アライグマは結構力があるので草なんて簡単に手繰りよせるでしょうし、タヌキもトウモロコシを倒したりすることから食べることが可能だと思います。

一方で木に巣を作り産卵するような鳥にとっては、アライグマは新たな脅威だと推測します。日本で高いところにある鳥の巣を狙う動物としては、イタチ科のテンとヘビが考えられます。タヌキも金網をよじ登る力があったり、多少であれば登ることはできますが限界があります。アライグマと同じ哺乳類であるテンがいる地域では、所鳥類もある程度対策をとれるかもしれません。しかし、テンとアライグマではアライグマのほうが数倍体格も良いですし、山間部以外のテンの住まないところの鳥類には完全な新たな脅威と言えるかもしれません。またテンも狙いにくかったある程度大型の鳥類は、影響を受けやすいかもしれません。

以上が今回の実験でしたが、タヌキ1頭とアライグマ3頭しかサンプルがないので、十分とは言えません。タヌキやアライグマは雑食で個体や地域によって食性が違うとも考えられるので、場所を変えて引き続き似た実験をする必要があると思います。

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