他の動物にどんな影響が?-アライグマと他の生物編

アライグマの生息拡大で影響を大きく受ける生物が居るのも事実の反面、まだわからない部分があるのも事実です。今回はそれらについて注目します。

鳥類

アライグマに影響を受ける例として挙げられるのは鳥類です。北海道のアオサギのコロニーが被害を受けて営巣(巣を作ること)を放棄したとされる例は、とくによく挙げられます。北海道アオサギ研究会さんがアップしている報告書を見ると、アライグマが鳥の巣を進入している写真を撮影されています。

小鳥も大きな影響があるでしょうが、元々蛇やイタチにテンに同じ仲間の鳥類と天敵が数多くいます。なので元々天敵に気を配っているでしょうが、アオサギのような大型鳥類だと体が大きいのである程度の天敵には対抗できるはずです。そこへ新しい天敵が現れたとなれば、特に影響も大きいと思います。

対策としては鉄板を木に巻き付け、アライグマを登れなくするようなものがあります。営巣する木が決まっているなら良いのですが、そうでない場合は対策が難しいところです。

もっともアオサギを含むサギ類に限って言えば、生息数は増えている傾向にあると言われています。しかし、身近な動物の大半が正確に調査されていないように、サギ類も同じです。鳥類の中では比較的調査されているほうだとは思うのですが、生息数が増えているというのをどこまで信じてよいか難しい部分もあります。

アライグマ以外の要因

アライグマが大きな影響を与えている可能性は高いのですが、その他の要因も見過ごしてはいけません。

農薬の影響で餌の昆虫が減っていることや開発により、世界的に鳥全体が減っています。これは日本でも同じことが起きてると考えるのが自然です。もう一つは良い話で日本ではタカなど猛禽類の保護が進み、一部地域では数が増えています。それにより巣の場所などの生態が本来の姿に戻り、変化が見られていることです。

こういった他の部分も考慮しながら、影響を見極め対策していくことが必要となっています。

サンショウウオ

影響を受けているのがはっきりしているものの一つが両性類です。被害がよく確認されているのはサンショウウオの例です。サンショウウオの仲間は色々いますが、流れが穏やかな場所に住むトウキョウサンショウウオは被害の報告が上がっています。

アライグマはサンショウウオ自体を食べるだけではなく、卵嚢(らんのう)という卵の塊も食べてしまいます。サンショウウオの天敵はもちろんアライグマだけではありません。鳥やタヌキなども天敵にはなります。しかし、サンショウウオを保護活動する人たちの調査によると、水の中に入って積極的に捕食するのはアライグマのみという報告が出ています。

アライグマの名前の由来の通り、手探りで水中の食べ物を探す習性を持ちます。これは日本の他の動物にはない習性なので、説得力のある話です。

サンショウウオは逃げられない


・生息地や移動経路の消失
・ウシガエルやザリガニなどの外来種
・在来種イノシシの増加

鳥類同様にアライグマが以外も、大きな影響を与えています。

水田の消失や開発など両生類の住める場所の消滅があります。鳥のように移動能力が高い生き物であれば、違うところに移動することも可能です。しかし、サンショウウオは遠くまで移動することができません。これは最も大きな問題だと思います。

アライグマ以外にもウシガエルやザリガニなど、他の外来種の影響を受けています。

在来動物のイノシシの影響もあります。イノシシは雑食で、鼻を使って泥や川を掘り返して色々な生き物も食べます。そのいった習性を持つイノシシが増えたことで、サンショウウオにも影響が出ています。

アライグマの捕獲以外にも対策はあるが…

アライグマへの対策で有効な対策があります。それは産卵・生息する場所の水深をまず30cm以上にすることです。アライグマはある程度水深があると、その水深までは入りにくくなります。

そしてその場所の上にすだれやネットなどで覆い、シェルターとします。単純に覆うことで隠れ家を作ることになり、アライグマからの捕食から守ることができます。そして先の水深を確保する方法を併用することで、アライグマがその場所へ近づくこと難しくし、更に効果を高めることです。

こうすることで管理されている生息地であれば、捕獲をしなくても一定の対策が可能です。しかし、アライグマの生息密度が高い地域や、管理されていない場所に住むサンショウウオのことを考えると捕獲による駆除も選択肢に入ってくると思います。

ただ、一番の問題は生息地自体の消滅だと思います。ある程度分散させるために、人為的に移動させることも検討しなければいけないのかもしれません。

モリアオガエルも影響を受けている可能性がある

現状断定はできないのですが、可能性として高いものとしてモリアオガエルの話があります。

2012年の5月中頃に繁殖期のモリアオガエルを中心としたカエルだけが大量死するということがありました。見た目としてあまり傷のないものから、何かに咬まれたようなものなど様々でしたが、ほとんどに何らかの傷がある傾向にありました。病気や何等かの動物の捕食が疑われ、結果として最も可能性が高かったのがアライグマということでした。

被害を受けたカエルの調査のほか、5月下旬から6月下旬までセンサーカメラが設置されました。その時の調査ではタヌキの捕食が少し見られました。しかし、仕留めた獲物を大量に放置するような話は今まではなくタヌキの可能性は低いとされました。そして調査終わりにちかい6月下旬にアライグマらしきものの背中が写っていたいので、アライグマの可能性が高いという結論となりました。

今まで見られなった現象ということも、アライグマが新たに進出したと考えれば納得のいく話です。

ただ一つ気を付けないといけないのは、既存の動物でも思わぬ行動をとることがあることです。その点も含めるとアライグマの可能性が高いと言うに留めるのが、良いとも言えます。

※参考文献
伊原禎雄、宇根有美、大沼 学、佐藤洋司、新国 勇(2014)「福島県只見町で発生したモリアオガエルの大量死について」(野生動物と社会より)

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