アメリカミンクー日本の外来生物たち

ミンクという名で名前だけはお馴染みの、アメリカミンクが日本に既に住んでいることを紹介します。

ミンクといったらあのミンク

アメリカミンクはイタチ科の中型動物です。ミンク油や毛皮で有名な、あのミンクです。名前だけはお馴染みの動物です。体重はオスが1kg程度・メスが700g程度で、日本に元々生息するイタチの仲間のテンよりは小さく、イタチよりは大きいといった具合です。

名前の通り元々は北米大陸に住んでいましたが、毛皮用に飼育していたものが逃げ出しました。1950年代には日本全国で飼育が行われ、北海道では1960年ごろには定着が確認されています。今では北海道の広範囲のほか、宮城県・福島県・宮崎県・鹿児島県に、栃木県や群馬県の一部でも確認されています。上に挙げた県以外にも少数が住むようなってると考えるのが自然です。アライグマやハクビシンのように、徐々に生息域を広げていく可能性があります。

雑食で済む環境に応じて食べ物を柔軟に変えることは出来るものの肉食に近いため、様々な動物を捕食し数を減らしてしまうことが心配されています。

・カワウソ騒動を起こした
・外来種が外来種を食べる
・一部では高密度で生息
・本当は夜行性なのに昼も活動する

※参考文献
環境省ホームページ 特定外来生物の解説 アメリカミンク

確かにカワウソに似てる姿・生活

毛皮用に様々な色の品種がいますが、日本で野生化しているのはほぼ真っ黒の北米に住む野生種に近い色です。

アメリカミンクは雑食で植物性のものも食べますが、動物性のものを主に食べます。日本に住むアメリカミンクの調査では、水辺に住む動物をよく食べザリガニなどの甲殻類を好み魚やカエルも食べます。その他に虫やネズミに鳥と、陸に住む生き物も食べます。魚などを食べる際は、水深5m程度までで長さ20秒ほど潜水することが出来ます。

水辺に住むのを好み、川・湖・海と水の近くに巣を構えます。木や岩の下や土の巣穴に住みます。実際釧路湿原での目撃例でも、湖の釣り人やカヌーをする人が多く目撃しています。

この特徴からカワウソ騒動も起こしました。栃木県の那須でカワウソが居るらしいという話が出て、調査の結果はアメリカミンクでした。姿がイタチ科で遠目で見れば似ている上に、水棲動物を好んで食べたり水に潜ったするので、動物に詳しくない人がカワウソと誤認するのは当然とも言えます。また、カワウソの居なくなった日本では、生態系の中でその地位に位置しつつあると考えている人もいます。

※参考文献
竹中 悠「外来種アメリカミンクによる越冬中のエゾアカガエルの捕食記録」(爬虫類両生類学会報 2008)、 釧路国際ウェットランドセンター 「釧路地域の外来生物 ミンクのはなし」

外来種を食べる外来種

日本では甲殻類を好むことから、ザリガニ類をよく食べることが知られています。福島ではアメリカザリガニを、北海道の釧路湿原ではウチダザリガニを主食として食べていて、時期によっては殆どの餌をザリガニに頼ることもあります。なので結果的には外来種が外来種の天敵となり、数を減らすこととなっています。ただ、ザリガニ捕るのが難しくなる冬などは、ネズミや冬眠中などのカエルなど他の動物も食べているようなので、外来種だけが減るという結果にはなっていません。

※参考文献
岸元良輔 「千曲川源流域における外来種アメリカミンクMustelavisonの野生化」長野県環境保全研究所研究報告 (2005)、南佳典・積田有斐・下山彩希・吉川朋子「北海道東部釧路川源流域の河畔林内に生息するアメリカミンクNeovison vison が及ぼす小型げっ歯類への影響」自然環境科学研究 Vol.29 (2016)、伊原禎雄・稲葉修・佐藤洋司・藤原かおり「福島県阿武隈川におけるアメリカミンクNeovison vison の食性」野生動物と社会 (2017)

一部地域ではすでに激増

ここまでではさほど問題がないように思えますが、非常に高い生息密度になるまで一部地域では増えているため今後影響が出るのではと心配されています。福島県を流れる阿武隈川の支流で2010年に行われた調査では、世界的に見ても高い密度で生息している可能性が示されました。数が少なければ大きな影響を与えずに、日本の生態系に馴染む可能性もあります。しかし数が多くなれば話は別で、同じイタチ科の仲間への影響や、ザリガニが獲れない季節に他の小動物が数多く捕食される可能性が問題となっています。

※参考文献
伊原禎雄・稲葉修・藤原かおり・佐藤洋司 「阿武隈川支川におけるアメリカミンクの生息密度推定」 Wildlife Conservation Japan 14 (2013)

家畜化で失われた習性

日本に住むアメリカミンクの面白い特徴として、本来夜を中心に活動するはずが昼にも活動するとことです。これは北米と環境が違うことが理由の可能性もありますが、元々は養殖されていた個体なので、そういった習性が薄くなっていると考えられています。

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