アムールハリネズミー日本の外来生物たち
静岡県や神奈川県に生息するアムールハリネズミからペットのハリネズミまで、外来生物としてのハリネズミを紹介します。
※参考文献
環境省HP「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律に基づき規制される生物のリスト【動物】」
日本で飼えるハリネズミの種類は少ない
最近ペットとしても紹介されることの多いハリネズミですが、日本で流通しているハリネズミは基本的にヨツユビハリネズミだけとなっています。これは見た目が他のハリネズミと比べて特に愛くるしいというのもありますが、殆どのハリネズミが未判定外来生物や特定外来生物に指定されているからです。
ヨツユビハリネズミの仲間は未判定外来生物
ハリネズミの場合種類ごとではなく、属単位というある程度まとまったグループで未判定外来生物に指定されています。指定されているのは、ヨツユビハリネズミを除くアフリカハリネズミ属、オオミミハリネズミ属、メセキヌス属(ダウリアハリネズミ属)となっています。
まず未判定外来生物の説明ですが、特定外来生物と違って繁殖や飼育や販売が規制されるものではありません。しかし、輸入は申請が必要で、その際に日本の生態系に悪影響を及ぼすと判断されると輸入が出来なくなります。なので指定されると輸入が難しくなります。
つまり未判定外来生物でも、ペットショップなどでの販売や個人で飼うのが規制されるわけではありません。国内で繁殖させたものであれば、ペットショップに流通させることが出来ます。ただ、ペットショップのホームページなどを見るとわかりますが、結構色々な動物が海外輸入に頼っています。また、将来的に特定外来生物に指定される可能性が高いのも、避ける要因かと思います。
そういった事情もあり今も輸入が出来、特に規制が無いヨツユビハリネズミが日本のペット市場では主流となっています。
余談ですが特定外来生物や未特定生物についての知識は結構間違ったものが流れていたりするので、環境省HPのリストで確認することをお勧めします。
余談ですが特定外来生物や未特定生物についての知識は結構間違ったものが流れていたりするので、環境省HPのリストで確認することをお勧めします。
※参考文献
環境省HP「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律に基づき規制される生物のリスト【動物】」
ハリネズミ属は全て特定外来生物
4種類居るハリネズミ属は全て、飼育・販売・移動などが原則できない特定外来生物となっています。その中の一種アムールハリネズミが、既に日本に定着しています。今のことろ日本で確認されるのは、アムールハリネズミだけです。日本で定着している場所もまだ広くなく、小田原や伊東と神奈川県や静岡県の一部が中心です。
アムールハリネズミは別名マンシュウハリネズミとも呼ばれ、中国からロシアの日本海沿岸地域に住んでいて、韓国にも生息しています。ペットが逃げ出した・逃がしたのが日本に住む原因と言われています。元々日本に近い気候に住む種類なので、定着しやすかったと考えられます。
アムールハリネズミ以外のハリネズミは日本の近くに生息していないものの、場合によっては日本に馴染みそうな種類が多く含まれています。
ハリネズミは意外と世界中に居る
そもそもなんでこんなに大々的に規制されているかというと、ハリネズミは世界中に広く住んでいるからです。
ハリネズミはアフリカ大陸と、ユーラシア大陸に広く生息しています。先ほど紹介したヨツユビハリネズミを含むアフリカハリネズミ属はアフリカに、それ以外の種類の大半はユーラシア大陸各地に生息します。
このように広くに色々な種類が生息し、先ほど紹介したアムールハリネズミが日本に定着してしまいました。もちろん日本で住むことが難しそうな種類もいるのですが、日本に住むことが出来るのから微妙なのまでいるので、まとめて指定されるのも止む無しという感じです。
ハリネズミはどんな影響を与えるか
ニュージーランドにはイギリスなどヨーロッパを中心に住むナミハリネズミが、外来種として定着しています。それにより渉禽類(しょうきんるい)つまりシギやサギ類などの仲間のうち、地上に巣を作るタイプの卵の被害が報告されています。
日本のほうに目を向けるとまだよくわからないというのが実態です。ニュージーランドは元々コウモリ以外の哺乳類がおらず、マオリ族やヨーロッパ人が移民として入ってきた時にネズミを含め家畜として哺乳類を連れてきたのが始まりです。なので、日本には鳥の卵を食べるネズミが元々生息しており、ハリネズミが増えてもニュージーランドほど地上に巣を作る鳥たちは影響を受けない可能性は高いと考えられます。ただ、日本にアムールハリネズミが定着が確認されたのが小田原であれば1987年と、あまり日が経っていません。今後数が増えると分かりません。
アムールハリネズミを捕獲するための餌の選定実験では、植物性のものより魚のアジ・犬用缶詰・卵など動物性のものを好んだとします。なので被害が出るとすれば、植物より生物のほうが大きくなりそうです。また、箱罠に対する警戒心は非常に低く、アライグマのように取り逃した個体が箱罠に入らなくなる可能性は低そうです。適正な場所と餌を選べば捕獲率は高められそうです。
※参考文献
笠貫ゆりあ, 鉄谷龍之, 石井信夫, 安藤元一「カゴワナ捕獲用餌の探索を目的にした外来種アムールハリネズミErinaceus amurensis の飼育下における餌選好試験」森林野生動物研究会誌 41(2016)、 市川恵三,中村一恵 「神奈川県におけるハリネズミの野生化」 神奈川自然誌資料 (11) (1990)
普通のネズミがダニを媒介するように、アムールハリネズミもその可能性があります。伊東市のアムールハリネズミの調査では、キチマダニとタカサゴキララマダニという病気を媒介することのあるマダニの仲間が付着していたのが確認されています。なので注意が必要です。
ただ、ダニなどの何らかの生物が寄生しているのは、全ての野生動物が同様に寄生されているとも言えるぐらいで、アムールハリネズミが特別というわけではありません。そのため過度に恐れることはありません。元々針があるので素手で触る人は居ないと思いますが、素手で触らないようにしたり、野生動物が居るところでは素肌をさらすの気を付ける、触ってしまったら手を洗うなど他の野生動物と同様の注意をしましょう。
※参考文献
竹内萌香, 加藤英明, 浅川満彦 「静岡県産アムールハリネズミ Erinaceus amurensis から得られた寄生虫」日本野生動物医学会誌 22 (2017)、 神奈川県衛生研究所HP マダニついて
笠貫ゆりあ, 鉄谷龍之, 石井信夫, 安藤元一「カゴワナ捕獲用餌の探索を目的にした外来種アムールハリネズミErinaceus amurensis の飼育下における餌選好試験」森林野生動物研究会誌 41(2016)、 市川恵三,中村一恵 「神奈川県におけるハリネズミの野生化」 神奈川自然誌資料 (11) (1990)
可愛くても他の野生動物と同じように注意
ハリネズミは針で防御するために動きが素早いわではなく、捕まえようと思えば素人でもできると思います。ですがダニや病気の可能性は、他の動物同様にあります。普通のネズミがダニを媒介するように、アムールハリネズミもその可能性があります。伊東市のアムールハリネズミの調査では、キチマダニとタカサゴキララマダニという病気を媒介することのあるマダニの仲間が付着していたのが確認されています。なので注意が必要です。
ただ、ダニなどの何らかの生物が寄生しているのは、全ての野生動物が同様に寄生されているとも言えるぐらいで、アムールハリネズミが特別というわけではありません。そのため過度に恐れることはありません。元々針があるので素手で触る人は居ないと思いますが、素手で触らないようにしたり、野生動物が居るところでは素肌をさらすの気を付ける、触ってしまったら手を洗うなど他の野生動物と同様の注意をしましょう。
※参考文献
竹内萌香, 加藤英明, 浅川満彦 「静岡県産アムールハリネズミ Erinaceus amurensis から得られた寄生虫」日本野生動物医学会誌 22 (2017)、 神奈川県衛生研究所HP マダニついて
名古屋で見つかったアムールハリネズミ
2012年に名古屋市でアムールハリネズミが見つかりました。このハリネズミのミトコンドリアDNAを分析した結果、小田原にいる個体群にほぼ同じとわかりました。今のところ見つかっているは一匹だけです。つまりこのハリネズミは誰かが小田原で捕まえたのを名古屋でこっそり飼っていて逃げ出したか、小田原からの荷物に紛れて運ばれてきたと考えられます。
偶発的な移動にせよそうでないにせよ、こういったことが起こらないようにしなければなりません。ゆっくり広がる分には在来生物たちも全てでないにせよ対応し、馴染むことが出来るかもしれませんし、そもそも移動力の問題から殆ど広がらないかもしれません。在来生物たち、アムールハリネズミたち、そして私たちのために外来種の移動については注意しなければなりません。
※参考文献
野呂達哉, 松原美恵子, 村瀬幸雄, 森山昭彦 「名古屋市で拾得されたアムールハリネズミErinaceus amurensis-mtDNA D-loop領域の解析結果から-」なごやの生物多様性 3 ISSN 2188-2541(2016)
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