タヌキーアライグマと愉快?な仲間たち編

身近な動物でアライグマとも混同されやすい動物の一つとして、タヌキの生態や特徴を紹介します。写真は全てホンドタヌキです。
記事作成日: 2019.04.27/記事更新日: 2021.04.19

日本古来の動物

かみね動物園のタヌキ
ホンドタヌキ
(かみね動物園)
・夜行性
・都心から田舎まで神出鬼没!
・家族思い?
・実は木登りもちょっと出来る
・何でも食べる雑食性
・家は賃貸派
・欧州ではアライグマと同じく外来種

特徴を簡単に上げると以上になります。一つづつ見ていく前に、概要をおさらいしましょう。

ホンドタヌキの横顔
冬毛のタヌキの横顔
タヌキはイヌ科の中型動物です。大きさとしてはネコより気持ち大きいぐらいですが、外見はおおよそ同じくらいです。体重は3~5kg程度と軽いです。丸い顔の印象ですが、横からみるキリっとしていてイヌ科の動物らしさを感じます。

日本では沖縄を除き生息します。海外ではベトナムからロシアにかけて沿岸部側に生息しているほか、外来種として毛皮用にロシアから持ち込まれた個体が東ヨーロッパを中心に生息し、生息を拡大しています。

日本では様々な場所に生息し相当数生息していますが、IUCNのRED LISTを見ると東アジアでの生息数は不明な部分が多いようです。一方で外来種としてはフィンランドなどに相当数生息してるのが紹介されています。

日本のタヌキは亜種という細かい区分で分類した場合、北海道に住むエゾタヌキとそれ以外の本州などに住むホンドタヌキに分類できます。基本的には同じ様な生態や特徴を持ちますが、エゾタヌキのほうが少し体が大きく毛足が長く寒冷地に対応できるようになっています。恒温動物の同じ種や似た種では寒いほうが体が大きくなる典型的なベルクマンの法則に当てはまるタイプです。

冬眠する生き物ではありません。春先に子供を産み、秋には育ちます。そして秋には冬へ向けて脂肪を蓄え、冬眠せず冬を乗り切ります。私の観察でも、タヌキは冬にも行動する姿を確認しています。一方で寒さのより厳しいエゾタヌキは冬眠はしないものの冬の行動をかなり抑えます。アライグマやアナグマも寒さの厳しさで行動が変わるので、タヌキも似たような生態を持つのだと思います。

夏毛のホンドタヌキ
夏毛のホンドタヌキ
(夕方の写真で色味が黒っぽくなっています)

夏毛のホンドタヌキ
上の写真と同じタヌキ
冬毛と夏毛があり、冬はモコモコ・夏は少し貧相になります。冬毛のタヌキと比べると印象はかなり違って感じると思います。

昔話にも登場する身近な動物ですが、案外まだ分かっていないことも多い動物です。害獣としての深刻度や希少性が高くない動物の場合、研究が中々進まなかったりします。それでも身近な動物の中では、まだ調査がされているほうです。

やっぱり夜行性

夜活動する野生のタヌキ
夜活動する野生のタヌキ
アライグマ、タヌキ、アナグマなどの例に漏れず夜行性です。日暮れから明け方にかけて行動します。なので近くに住んでいても目にする機会は少ないと思います。

昼に活動するタヌキ
昼に活動するタヌキ
午前11時ごろ
私の住む地域の観察では、夕方に私自身が目視したことがあったりトレイルカメラに日中活動する姿を確認しました。動物園でもアライグマほどではないにせよ起きてる姿を見ることが出来るのも考えると、昼も活動することがあるほうだと思います。

都心一等地皇居住み

最近テレビで取り上げることも多いと思うのでご存じの方も多いと思いますが、タヌキは都心のかなり中心部にも生息していることが分かっています。例を挙げれば新宿御苑や皇居などです。もちろん田舎にも住んでおり田舎から都心部の中心地と、柔軟に生息地を変えることが出来ます。

ただいくら都心に住めると言っても限度はあります。近年都心に進出してきてるハクビシンと違い電線を渡るような芸当は出来ません。そのため鉄道網の僅かな草地や側溝などを移動に利用してると考えられており、更なる開発で移動が難しくなると生息に影響が出る可能性があります。

父親も子育ての家族思い?

一夫一妻性でタヌキはつがいで子育てをする生き物です。これはイヌ科の動物全般に言えることで、キツネやオオカミもそうです。ただ、翌年も同じタヌキが必ずつがいを作るかは不明な部分があるようです。

キツネやオオカミと同じように、前年育った娘が翌年子育てを手伝う役目をするヘルパーになることもあるそうです。

トレイルカメラでの観察では年間通してペアのタヌキが見られたりするので、比較的絆の強い動物には感じます。夏には母タヌキと思われる大人のタヌキが、子供たちを連れて歩く姿も見ることが出来ます。

実はちょっと木登りが出来る

タヌキの後ろ脚
タヌキの後ろ脚
手足は基本的にイヌと同じ形で、アライグマやハクビシンのような木登りに特化した構造ではないものの、タヌキも少しだけ木登りが出来ます。金網フェンスのように更に登りやすい構造であれば、簡単に登ってしまうことが出来ます。

※参考文献
蔵本 洋介、古谷 雅理、甲田菜穂子、園田 陽一、金子弥生 (2013) 「高速道路進入に関わるタヌキ(Nyctereutes procyonoides)のフェンス登攀行動 (哺乳類科学)」

何でも食べる雑食性

タヌキは雑食性で、何でも食べます。自然が多いところであれば昆虫やミミズなどと、植物の両方を食べますし、季節の旬のものを食べるのでそれによっても変動します。都心のような自然の餌に乏しいところでは、残飯なども餌にします。

食べ物の構成は場所によって変わり、沢がある場所ではカニなどを食べます。ヨーロッパに住むタヌキは、日本より肉食性が強く植物性よりネズミなどの哺乳類を狩っています。

※参考文献
松山 淳子、 畑 邦彦、 曽根 晃一「鹿児島県におけるホンドタヌキの食性」(鹿児島大学農学部演習林研究報告)・高槻成紀 (2017)「東京西部にある津田塾大学小平キャンパスにすむタヌキの食性」(人と自然)・増田隆一、福江祐子、谷地森秀二、浦口宏治 (2009)「タヌキとキツネの多様性学」 (哺乳類学会 2008年度大会自由集会記録)・山本裕治、木下あけみ (1994) 「川崎市におけるホンドタヌキの食物構成」 (川崎市青少年科学館起要)

家は賃貸派

タヌキは家を自分では作りません。丁度よい穴があればそれを巣穴にしたり、一時休むための場所にしたりします。アナグマは地下に穴を掘って比較的大きな巣を作るので、それを利用したりします。都心部であれば側溝や民家の軒下に巣を作ることもあります。

異国の地を駆けるタヌキ!

最初にも少し触れましたが、ロシア産のタヌキが東ヨーロッパを中心に増えています。極東ロシアに自然に繁殖しているタヌキとは別に、毛皮用にヨーロッパ近くのロシア西側での繁殖が試みられました。そのタヌキが定着し、東ヨーロッパを中心に勢力を広げています。

Newsweek日本版の記事ではヨーロッパでは感染症の媒介や生態系の影響が心配されていて、鳥の個体数減少に関係しており、ドイツでは3万頭の駆除が行われているとも紹介されています。なので、コビトカバとの交換の件で極東のレア動物扱いされたりすることもありますが、ある程度珍しい動物だとは思いますがちょっと違う感じはします。悲しいことにヨーロッパでは日本におけるアライグマの立ち位置です。

国内でも本来生息しないはずの屋久島でタヌキが確認されています。このような動物を国内移入種といいます。外来種ではないものの、本来居る動物ではありません。何らかの生態系の影響が心配されます。

海外の動物園へ渡ったタヌキ

1905年にはアメリカニューヨークの動物園で日本の白いタヌキが飼われていました。

最初に少し触れましたが、2010年に久留米市鳥類管理センターのホンドタヌキが旭山動物園の仲介でシンガポール動物園のコビトカバと交換されました。そのタヌキは式典の後冷暖房完備の獣舎で飼育されています。

コビトカバはアフリカに生息する希少な動物なので、タヌキが一定の希少性を持って迎えられたのは事実だと思います。シンガポール動物園は設備の質や檻や柵を見せない展示に動物への福祉配慮と、世界的に見ても非常に高いレベルなのは有名です。なので冷暖房完備は熱帯のシンガポールの気候を配慮した飼育で、特別待遇というわけでは無いと思います。

※参考文献
(2016)「1905年にニューヨークの動物園にいたあるタヌキの来歴 (三重大学教養教育機構研究紀要)」

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